PDFは、真っ赤なロゴが印象的なAdobe社で開発されました。
カズレーザーが Adobe Acrobat のCMに起用されていますが、
水を得た魚のように映えてますね。キャスティングがうまい。
このAdobe社そのものが、じつは印刷会社にとってかかせないものです。
もともと、Adobe社の主な事業は「ページ記述言語」の開発でした。
これは、印刷したいイメージを印刷機に指示・伝達するためのプログラミング言語です。
いまのようにデジタルデータで印刷物を管理しはじめた1980年代初頭、
各社がページ記述言語を開発し、乱立していました。
しかしどんなプリンターでも同じように印刷するには、データのつかいやすさはもちろんのこと、
印刷するデータの規格を統一しておく必要があります。
IllustratorやPhotoshopは、ユーザーが印刷用データを作りやすくするために
Adobeが開発したアプリケーションであり、それらが発表された1980年代後半は、
(同じくAdobeが開発した)PostScriptというページ記述言語が印刷業界の
主流だったそうです。
Adobeは1990年代に入って、PostScriptの後継言語を開発します。
それまでの問題点を解消して、どんなパソコンでも問題なく画面表示できる、
そしてそのまま印刷できる新たなページ記述言語が登場します。
それが「PDF」( Portable Document Format ) です。
わたしたちがPDFと呼ぶものは、正確には、「PDFというデータ形式で記述されたファイル」のことです。
PDFの発表後、米国国税庁がPDF形式の納税申告用紙を採用し、
2008年には国際標準化機構(ISO)によって国際基準の仲間入りを果たしました。
どんなパソコンでも開くことができて、そのまま印刷できる。
いまではあたりまえのことですが、これを世界に普及させたのが
PDF(というページ記述言語)でした。
すこし長くなりましたが、これまででおわかりのように、
PDFの出自は印刷業界だったりします。
そんなPDFは1993年に発表されたので、今年で30周年。
生活に馴染んだだけの時間は経ってますね。
私事ながら、わたしも今年で30歳です。
デジタル印刷の歴史と自分がはからずも重なることに
おどろきながら今回のメルマガを書きました。
ということで、今回はPDFのちょっとしたお話でした。
みなさんもPDFを讃えよ!
(マッドマックス風に)
参考文献
・Whitington, John. 2012年『PDF構造解説』 翻訳: 村上雅章,オライリー・ジャパン
・編集: 生田信一, 西村希美, 加藤諒. 2022年『グラフィックデザイナーのためのDTP&印刷しくみ事典』, ボーンデジタル